ことばのくさむら

言叢社の公式ブログです

新年あけましておめでとうございます

 

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ともに高良留美子著 左:『仮面の声』(1987年 土曜美術社) 右:『見出された縄文の母系制と月の文化』(2021年 言叢社)

 


あけまして おめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

  去年夏少し前に刊行しました『見出された縄文の母系制と月の文化──〈縄文の鏡〉が照らす未来社会の像』の著者・高良留美子さんが、去る12月12日、88歳にて逝去されました。

 1960年代、詩人として輝かしく出発された高良さんは、同時に、女性史研究・思想家としても著書を多く残しました。 

 20世紀最後の四半世紀、歴史学会の主流は双系制論に傾き、女性史研究家・高群逸枝の母系制論が厳しい批判にさらされていた時代、高良さんは本格的に神話研究を始め、高群の研究を継承。先史縄文に〈母系・母権〉と〈月の文化〉を模索する探究とともに、バッハオーフェン・モルガン・エンゲルスにはじまる、それ以後の人類学の流れにまで立ち返ってたぐり直し、考古学をはじめ最新の歴史・神話・国文学・DNA・海民・アイヌ研究などの業績を批評的に読解、列島の社会文化に果たした「女性文化」のもつ大きな力を描こうとされました。そこからさらに、来たるべき社会像を捉える試みにまでいたる「書き下ろし作」を88歳のご高齢で完成させたのです。

 

「わたしは自分の身体を好きとはいえなかったが、それを憎んだり切り捨てたりするつもりはなかった。」「自由であることと自然であること、その両方を生きたかったのだ。」「その意味で、「自由」は無限定な自由ではなく、「自然」は単なる物質としての身体性ではなかった。「自由」は「自然」を切り捨てずに生かすための自由であり、「自然」は「欲求」や精神や感情を内包する自然だった。」

 

  こんな実存的文章で始まる本著の、時代のもとで身ゆるぎしながら、自前の思想を養っていった、著者のメッセージを深くうけとりたいとおもいます。 つづいて、新年はじめの文は、この高良著作刊行を支えた、編集者です。  五十嵐記

 

 

『見出された縄文の母系制と月の文化──〈縄文の鏡〉が照らす未来社会の像』

高良留美子 コウラルミコ【著】
ISBN: 978-4-86209-083-6 C1021
[A5判並装]536p 20cm
(2021-06-01出版)
定価=本体3960円(税10%)

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2021年12月26日 遼寧省皮口鎮 黄海の日の出 海の中の手前の仕切りは、貝類の養殖場だそうです

ドイツの日本学者・ネリー・ナウマンは、私たち日本人にむけて『山の神』をはじめとする4冊の本を届けてくれた。

その最後の本、「縄文論」『生の緒 いきのを』の装丁をされた、金田理恵さんの新年賀状です。

 

 

ネリー・ナウマン 著作集

『山の神』 1994年刊(現在品切れ)
『哭きいさちる神 スサノオ──生と死の日本神話像』 1989年刊(現在品切れ)
『久米歌と久米』 1997年刊 amazon
『生の緒 いきのを──縄文時代の物質・精神文化』 2005年刊 amazon

(『生の緒』より)──「縄文人の宗教的思考」は「複雑な体系をした思考であり、人間の抱くあらゆる疑問のなかで最古の疑問、すなわち生と死、とくに未来の生に関する疑問を核心に据えていた」

『光の神話考古──ネリー・ナウマン記念論集』 2008年刊 amazon

記事リンク ✴︎ナウマンさんの思い出 (言叢社ホームページ)

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