ことばのくさむら

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新刊『誰だって誰かのヒーローになれる』感想文のご紹介

☆感想文を寄せていただきました!

 

『誰だって誰かのヒーローになれる』を読んで
                                 
 大学在学時の恩師の紹介により、拝読しました。

 私が興味をひかれた部分以下3点について、感想を述べてみたいと思います。
①夫婦の子育て協力
②親が正しい情報を得ることの重要性
③いのちの選別・障害に対する偏見差別について 

 

①夫婦の子育て協力
 イクメンという言葉がではじめて久しい昨今です。
 この令和の時代になっても、まだまだ育児は女性中心という考え方のもとに育ってきた世代が多い中、広岡さんの八面六臂の家事育児に、単純に感動を覚えました。楽しんで子どもにかかわる姿、本当に素敵だなと思います。
 また、奥様の「まあ、いっか!」という前向きな気持ち、見習っていきたいです。
 どうしても、「なんでできないの?」「いま~してるから、待って!静かに!」
 自分の家事の進度や気持ちが中心になり、反省している毎日です。
 我が家では、夫婦とも半年かけてようやく一通りの動作が板についてきました。
 夫も子育ては大変だけど楽しい、子どもはかわいい、と日々感じ取ってくれているようです。



②正しい情報を得ることの重要性
 昨年6月息子が誕生しました。妊活2年半、その間に婦人科系疾患の手術2回、3度の体外受精そしてコロナ禍を得てようやくのことでした。
 妊活中から妊娠出産前そして現在も、メディア・インターネット・SNS等、様々な情報伝達ツールの使用方法、情報過多の中での誤認識、信用性などの不安を日々感じています。ですが、安定期までの薄氷を踏むような日常生活、日々変化していく自分の体調と体形、周産期に向けての精神状態、出産後の一変した生活、一日の時間の経過の早さ。自分自身が経験して得た知識は、情報ツールを使ったものにはおおよそ得難い確証と信頼を持つことができました。
 本書は、まさに経験からの生きた情報がテンポよく活き活きと書かれており、その点もすごく興味深く読ませていただきました。

 

③いのちの選別・偏見差別について
 日本では現代にそぐわない古い慣習が多様化しているなと、日々感じています。
障害に対するものだけでなく、出産において私も様々なことを、親世代の方々から、言われてきました。
 「母乳で育てるのが一番よ!」「帝王切開なのね、お産楽だったでしょう?」
 「高齢出産になるのね、赤ちゃんの検査はした?」
 「指が5本ずつちゃんとあるね、よかったね!」
 令和になっても、まだ古い慣習の浸透。いちいち反論してしまえば、母乳でもミルクでも赤ちゃんが成長すればどっちだっていいし、帝王切開は手術なのだから、自然分娩より痛くない! なんてそんなわけがない。赤ちゃんの検査も以前とは違い、超音波検査、新生児マススクリーニング検査など、精度も増し手厚くされている。
 最後の指の件は、近しい人からの言葉だっただけに少しショックでした。
 障害に対する向き合い方も、今の世の中とはかけ離れていると思います。
 広岡さんも書いておられたように、
「わが子(孫)の人生の見通しが立たない不安」
「親としての責任」「子ども(孫)に夢や希望が持てない」恐れ。
 この不安から、日常生活でも生きてゆくのに苦労する、接し方がわからない→偏見、となっているように思います。
 古い慣習が当たり前とされてきた世代に、それが“当然”のように生活を送り、子どもを育て生活を送ってきた方々が、まさに広岡さんも直面した「就学猶予」の勧め、NIPTでのいのちの選別問題の中心にいるのだろうと推測されます。

 私も不安がなかったかと言われれば、うそになります。
 しかし、NIPTを受ける選択肢は、はじめからありませんでした。なぜなら、夫婦で待望の我が子でしたし、どのように生まれてきてもきちんと育てよう、と話し合い、一定の覚悟ができていたからです。
 NIPT、障害への偏見、一人一人考え方は違って当然であるし、他人に考えを押し付ける権利もありません。先に挙げた古い慣習をお持ちの諸先輩方の考えを否定する権利もまた然りです。
 それならば、これから成長していく子ども世代やこれから親になる世代に、“経験者”である今の子育て世代が、経験に基づく情報、刻一刻と進歩する医療、新設や改新された公的な補助の正確な情報を知識として蓄え、伝えていくこと。それが古い慣習を刷新できる一端となればいいなと考えています。

 今、子育て真っただ中の私に、本書は、とても楽しくまた参考になることもたくさん書かれていました。(どの部分が参考になるかは、これから読まれる方のお楽しみ! です)
 いい本に出合えてよかったです。何度でも読み返したい本となりました。
 また、自分と同じように子育て中の方や、これから新しい家庭を考えている方たちに本当にお勧めしたいと思います。

 「期待を手放すことが子育て」この言葉を胸に、これからも広岡様や奥様のように子どもとともに楽しく子育てして、また自分自身も成長していきたいと思います。
 コロナ禍、大変お忙しいとは思いますが、ご家族皆様が健康でありますことをご祈念いたします。

 

   いたずら息子を小脇に抱えながら 大寒過ぎの自宅にて
                           たなせ まりこ

 

 

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『誰だって誰かのヒーローになれる―ダウン症児の子育ち日誌』広岡真生著

 

 年末、著者の父上の肝いりで、有志のかたがたの発起人をえて、著者出生の地、練馬区の公共施設で出版記念会がとりおこなわれました。この時期にふさわしい、簡潔で、けれども心のこもった、1時間の会でした。ここでも主役はあゆさんと、著者である「とうちゃん」。
 まずは、あゆさんが属している、ダンス教室の方たちのダンス。何人かの方の祝辞と、とうちゃんの講演もあり、講演台の真正面に陣取ったあゆさんは、話をまっしぐらに受け止めて、心がいっぱいになっている感じでした。最後にあゆさん1人のダンスと話。涙目の声で、「とうちゃんありがとう」がはっきり聞こえました。
 著者の父上は、政治思想史・評論家(中央大学教授)の広岡守穂さん。じつは、1990年に岩波書店から『男だって子育て』という本をだされていました。「30年後に、まさか、長男真生が子育ての本をかくとは、夢にもおもわなかった」とおっしゃっています。
本著の最終ゲラを読まれた父上から真生さんに、「読み応えがあった」というエールが届いたそうです。
 この父と子が、人間の基本的な家族をテーマにした表現がうけつがれたこと、時代に対してそれぞれの立ち居地から不可避な問題をテーマに書きつがれていることは、とても興味深いことだと思います。

 

 

 

『誰だって誰かのヒーローになれる』出版記念会の様子をちょこっと紹介させていただきます。

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著者の広岡真生さん

 

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花束手にしたあゆむ君

 

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ダンスのなかまたちと記念撮影

そう、みんな誰かのヒーロー&ヒロインなのだ!

 

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