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みちの会 第11回研究会のお知らせ

●第11回研究会

講演者:橋本 彩(東京造形大学)


タイトル:「ラオス競漕祭における伝統とスポーツの関係
  ――ヴィエンチャン競漕祭の歴史的変遷から」



日時:2019年6月29日(土)13:00開講。3時間から4時間ほど。質問・討議を含めて。
会場 :東方学会本館2F会議室(千代田区西神田2-4-1、東方学会本館)
会費:500円



 

概要ラオスメコン川流域では、毎年雨季明けを告げる出安居祭の翌日に競漕祭が行われている。水の神にかかわる、この民俗宗教的年中行事である競漕祭の研究は、主に19世紀後半から20世紀にかけて民俗学者文化人類学者によって、祭礼の由来や機能的意味、神話・伝説との連続性、宗教性、象徴性などを明らかにする個別研究が行なわれてきた。しかしながら、21世紀に入ると当該地域では行事が継続されているにも関わらず、競漕祭は本来の儀礼的文脈を失ってスポーツ化したものとみなされ、文化人類学者の研究対象から外される傾向にあった。一方、スポーツ人類学研究の分野では伝統的スポーツとしての競漕祭に対する関心が高まり、「伝統」と「スポーツ」を対立軸に据えた歴史的変容を論じる研究がなされるようになっていった。しかしそこでは、当該地域の人々が「伝統」と「スポーツ」を自文化において主体的にどう規定していくのかについては論じられることなく、競漕祭をはじめ、伝統的スポーツ研究の多くは、西洋で成立した近代スポーツに照らし合わせて伝統的スポーツを解釈するコロニアルな二項対立的視点を脱せず、当該地域の人々の文化問題として論じる視点が欠けていた。
 博士論文では、ラオスの首都ヴィエンチャン競漕祭を事例に、その歴史(1893年~2008年)を文献と現地フィールドワークで得た調査結果を総合して再構成し、その歴史の延長上に生じた競漕祭をめぐる伝統論争(2000年の前後)について当該地域の人々の視点から分析し、「伝統」の取り扱いをラオスの近代化に伴う文化問題として論じている。