東京神田・東方學會本館探訪記
百花咲き乱れ、気持ちの良い若葉の季節になりました。
冠状疫情は変異株が主流になりつつあり、まだまだ先が見通せません。為政者たちの妄言や虚言に惑わされることなく、予防習慣を確実に実践し、「本を片手に!」日々を楽しく有意義に過ごしてまいりましょう。
さて、今回は本に関するお知らせではなく、言叢社の入る東方學會本館を紹介いたします。
堀越三郎設計、1924年(大正13年)竣工。元は東京中学校の三階建て校舎で、学校移転後日華学会に売却され、戦後東方學會の所有に。1971年に四階部分造築し、現在に至る。
↑ガラス張りの4F部分は昭和の造築
↑入り口はアーチと蘇鉄が目印
西神田の表通りから1本入った区画角地に、静かに佇んでいます。
千代田区の景観まちづくり重要物件に指定されており、その解説では
「竣工:大正 15 年(1926)頃。歴史・文化的特徴:東方学会は、昭和 22 年(1947)外務省所管により、日本の東方文化の学術的研究の発達、東方諸国の文化の進展および国際文化の交流を目的として設立された。建物の由来等は不詳。意匠・構造の特徴:鉄筋コンクリート造モルタル塗仕上げの簡素な建物で、中央入口を階段室にし、中廊下で教室をレイアウトした学校建築のようである。下側にカーブを持たせた窓庇兼用の窓台と、同様の形状の屋根庇が水平線を強調しているのと、入口の半円アーチ以外は非常にプレーンな、機能本位のモダニズム建築」
となっています。
装飾性を排除した簡素なデザインですが、入り口の立体的なアーチ構造と扁額のような「東方學會」(実際には右からなので「會學方東」)の文字が風格を感じさせます。
蘇鉄の木がだんだん大きくなって、少し扁額が見えにくくなってきましたが、今ではこれも建築物の風格の一部になっています。変わりゆく神保町の片隅の、リアルなレトロ物件です。古本屋街からも近いので、気軽に見学にいらしてください。
↑東方學會本館玄関
↑玄関を入るとすぐ階段があります。学校っぽい雰囲気は残っていますね。
↑言叢社はこちら
このブログの「中の人」が上京する機会は年に1〜2回しかありませんが、今回は新刊書のデザインに関する打合せの現場を垣間見ることができました。
和やかな中にも専門家同士の意見や意向が、時に小さな火花を散らしながら飛び交う様子は、あらためてここが知の発信基地であり、同時に書籍文化揺籃の地であることを深く実感させてくれました。
言叢社編集部は東方學會本館1F片隅の、小さな部屋にあります。小さな小さな部屋ですが、ここにはたくさんの夢や知識や歴史や文化がぎっしり詰め込まれていて、本となって世間に生み出されていく日を待っているのです。