ことばのくさむら

言叢社の公式ブログです

新刊紹介 羅英均著『わたしが生きてきた世の中』

『わたしが生きてきた世の中
 ―身辺からみつめた戦後韓国、激動の歴史

 羅 英均 著 
2015.10.に刊行いたしました。
 

 
●「私たちは政治をヌキにしては、かんがえられない。」という著者。戦後韓国社会の混乱を生き抜いた英文学者・羅英均と家族の自伝的記録です。たえずみじかな足元におこる政治社会の過酷さを、深い眼ざしで見据え続けた韓国の激動の戦後史でもあります。
満洲時代、奉天にあった日本人が主の小学校・加茂小学校に学び、「日本語でものを考え、血液の中まで日本的な要素が浸透した」少女は、16歳の夏にソウルで「解放」を迎えました。が、その日を境に、「日帝時代」に禁止されていたハングル語を学ぶことになります。教育現場は大混乱。
・戦後もしばらくは、外国の文学を日本語の翻訳で読み続けて、今でもじつは日本語が一番早く読める、といいます。韓国人でありながら、日本人的な感受をもつ、自己の「内なる二重性」への気づき。加えて、父親から早くに英語を学ぶことを薦められ、英語英文学の学究となった。
・この二重の内=外からのまなざしと、韓国人としての愛憎。そのゆえにこそ、自国の歴史を冷静にみつめながら、夫・全民濟とともに、生涯の仕事とするものを貫き通した。前著『日帝時代、わが家は』に続く自伝的記録は、一人の女性の生き抜き方とともに、われわれがほとんど関心をもたなかった隣りの国・韓国の戦後史を伝えてくれる、私たちの隣人への想像力にとって、とても大切なものをふくんでいる、と思います。
 
●「週刊読書人四方田犬彦さんの書評を掲載します。
四方田氏(比較文学史、映画史、漫画論、記号学)は、隣国ながら、この国の文化についてあまり知られていなかった韓国に20年前から関心を持ち、映画やロックなどさまざまなサブカルチャーの真価を見出して日本に紹介、韓国映画が活気づき国際的に知られる糸口になりました。1979年韓国ソウルの建国大学に1年赴任することになり、当時日本の英文学会会長だった由良君美氏が、韓国英文学会会長の羅英均さんに、弟子の四方田さんを紹介。羅さんは、由良さんから「よろしくたのむ」ということで、才能ある若い友人として、以後、長年のお付き合いをされてきました。
・羅さんの日本での最初の著作『日帝時代のわか家は』(みすず書房)が日本で出版されたのも、四方田氏の強力な薦めがあったようです。
 

 

羅家父母と私(手前中央)、妹弟
 

著者近影
 

南山からのソウル城内の眺望
 
[rakuten:guruguru-ds:11692599:detail]