ことばのくさむら

言叢社の公式ブログです

新刊のご案内です。高良留美子著『見出された縄文の母系制と月の文化』

『見出された縄文の母系制と月の文化』
〈縄文の鏡〉が照らす未来社会の像
高良留美子 著 コウラ ルミコ

 

詩人として出発した著者は、女性史研究、思想家としても多くの著書を残し、現在88歳。一貫した、女系文化へのまなざしは、詩人としての言葉の深さとともに、驚異的な思考を持続。今回原稿は、長くかけてそのつど書き継がれてきたものを、この二年をかけて、まとめられた、書下ろしです。

 

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夏に至りました

夏至の夕暮れ@渥美半島先端の伊良湖岬

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左手は潮騒の島・神島、右手が恋路ヶ浜です。

 

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恋路ヶ浜柳田國男が若い頃、漂着した椰子の実をみつけた浜です。

 

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太陽は対岸の鈴鹿山脈に沈んでいきます

 

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日没後30分近く経っていますが、いつまでもいつまでも西の空が赤く焼けています。

さて、梅雨空はどこへ行ってしまったのでしょうか。

 

 

◆ 4月の新刊のご案内です

『神話思考Ⅲ 世界の構造』 松村一男著

● 現在、和光大学総合文化学科教授。IACM(国際比較神話学会)のディレクターとして比較神話学研究の国際的連帯を進めており、東京外国語大学において非常勤講師として世界各国からの留学生に日本宗教と日本神話を英語で講義されている。くわしくは、下のチラシの裏面略歴を、ご覧ください。

 

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シリーズ『神話思考』を終えて

                              松村一男

 

● 神話学に魅せられて
 神話は不思議だ、あるようでないものだ。誰も見たことはないが、みなぼんやりと意味は知っている。その正体を明らかにしようとさまざまな分野の多くの著名な研究者たちが名探偵ばりに謎解きに挑んできた。
 哲学者ではフランスのレヴィ・ブリュールやドイツのエルンスト・カッシーラー、そしてオーストリア精神分析医ジグムント・フロイトやスイスの心理学者カール・グスタフユング。人類学からはフランスのクロード・レヴィ=ストロース、宗教学からはルーマニアのミルチア・エリアーデが参戦した。そして何が専門なのかはよく分からないが、とにかく有名だったジョゼフ・キャンベルも加わった。みんな「神話」という概念について論じたし、その概念を用いて過去や現在のあらゆる文化を分析してみせた。しかし結局のところ、神話とは何かという意見の一致は見られなかった。
 私もこの不思議な概念に魅せられた一人である。蛮勇を恐れず、名だたる有名人の驥尾に付して、神話という概念を手掛かりにして、超古代の出アフリカから21世紀の現代まで、日本の内外の、ありとあらゆる文化現象を分析してみようとしたのである。
 そこから生み出された成果か戦果か惨敗記録かは知らないものが、積もり積もって三冊の論文集となった。最初から計画的に研究をしたわけでも三冊の論集として刊行を計画していたのでもないので、全体の構成は成り行きまかせであり、あまりの広がり(とその底の浅さ)に呆れる方も少なくないだろう。
 これまで述べてきたように、神話は何かという正解あるいは一般的合意は存在しない。しかし漠然とした神話という概念を使って、あらゆる時代、地域の人間文化を分析してみることは可能である。この三巻の論文集は神話に魅せられた一人の人間がそうした課題に取り組んだ報告書であると思ってほしい。これだけ多様な領域が「神話」として(正しいか間違っているかの判断は後回しにして)考え得るのだという、ある種の「思考の冒険」の試みとして、呆れつつも楽しんで読んでもらえたら、それ以上の幸せはない。

 

● 三巻成立のあらまし
 もう少し具体的に書いてみよう。本書三巻には、私が大学院時代から研究者人生の終盤の現在までのほぼ四十年の間に書いたきた論文が詰め込まれている。以下では何が入っているかをテーマの多様性とともに一部だが紹介してみたい。なぜ多様になったのかは、私の関心の変遷とともに述べるのが分かりやすいと思うので、ほぼ時間系列に沿っての紹介となる。
 神話という分野に入るきっかけは、言葉の多様性と近似性という相反する二つの側面への関心だった。交換留学でアメリカの高校に行ったけれど、英語で四苦八苦していた私には、スウェーデンからの留学生が私にはネイティヴとしか聞こえない英語を話し、フランスからの留学生とはフランス語で話し、あとドイツ語も話せると聞いてひどく驚いた。
 多分、その驚き(とコンプレックス)が大学で比較言語学、そしてその延長としての比較神話学に向かわせることになったのだろう。
 さて、ちょうど私が大学生だった70年代は神話ブームと言われ、エリアーデの「永遠回帰の神話」やデュメジルの「三機能イデオロギー」やレヴィ=ストロースの「神話の構造」などの謎めいた魅力的なフレーズが流布していた。私はその中でも言語との結びつきが最も強かったデュメジルの理論にのめり込み、デュメジルの弟子であった吉田敦彦先生から勧められてローマ神話研究を始めた。
 デュメジルの理論をさらに知るにはもっと多くの言葉を学ぶ必要があると感じて、大学院時代にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の印欧語族研究というプログラムに留学した。ここでローマから手を広げてギリシアケルト、ゲルマンなどの神話についても考え始めた。
 ところが日本に帰国すると、日本神話について話したり、書いたりするようにも求められ、その面白さにも目覚めてしまった。また吉田先生、大林太良先生とご一緒に本を書く機会があり、神話理論や学説史の面白さと重要性も教えていただいた。
 さらにさらに21世紀になると、神話の起源を現生人類の誕生時まで遡らせようとする「世界神話学」を知るようになり、その理論的中心の研究者たちと交流するようにもなった。
 こうして手を広げてきた結果が、本書三巻なのである。ローマの神々、ローマの祭、印欧語族の救済観念、ギリシア神話ギリシア宗教、ゲルマン神話ケルト神話ギリシアとインドの叙事詩の比較、ゲルマンとイランの終末論の比較、神話学説史、戦争と神話、災害と神話、鳥の神話、動物(オオカミ、ヘビ、キツネなど)の神話、洪水神話、女性と神話、女神の神話、英雄の神話、日本神話の構造と歴史、神話の構造、現代神話などはまだほんの序の口であり、その他、ワシントンDCの神話や宇宙旅行の神話、ユルキャラの神話など、どこが神話なのだというような議論もまだまだ続く。
 このように、一見すればかなりバラバラな内容だが、所詮一人の人間の考えることなのだから、どこかで必ず繋がっている。そのつながりとは、おそらく人間の思考は多様な外見を示しても「根」は一つだろうという直感である。それがあるからこそ、平気でさまざまな対象に向かってこれたのだろう。
 ではその「根」とは何か?もちろん、私が考えているのは、ユングのような集合無意識ではない(存在が証明できないという点では似たり寄ったりかもしれないが)。私が考える「根」とは、人間の脳で進化の結果として発達した、自分を取り巻く世界を生きた存在が登場する物語として理解しようとするメカニズムである。アニミズムもその産物だと思っている。
 本書三巻のバラバラさについて自己弁護をするならば、こんなところに落ち着きそうである。

 

● 先生方、同僚、学友への謝辞
 最後になるが、高校時代から現在まで、神話について学び、考える過程で教えを受けた先生方、同僚、学友、学兄、学姉のお名前を出会った順に感謝の念とともに挙げさせていただく。神話学の他に宗教学でも仕事をしてきたので、その分野でも多くの方に学恩があるのだが、ここでは私が自分なりの神話学を作り上げるのに際して関連する分野について教えていただいたり、大きな刺激を受けたという点での恩人のみに限らせていただいている。本来なら当然、お名前を挙げなければいけない諸先生、諸先輩が見当たらなくても、そういう事情によるとご理解いただきたい。名前を出されてご迷惑と感じる方もおられるかも知れないが、諸氏のお名前から私の知的形成の過程を辿ることもできるだろう。

(敬称略)木下航二、亀井孝田中克彦、大竹敏雄、中山恒夫、渡辺金一宮田登、吉田敦彦、後藤光一郎、千葉惠、市川裕、スコット・リトルトン、風間喜代三、久保正彰、前田専学、原實、谷口幸男、ヤーン・プーヴェル、マリア・ギンブタス、ドナルド・ワード、ジェシー・バイオック、ピーター・ウォルコット、キャサリーン・コーリン・キング、ヘルムット・シャルフ、ハンス=ペーター・シュミット、パトリック・フォード、ジョセフ・ナージュ、ライモ・アンティラ、トッド・コンプトン、森信嘉、井上順孝島薗進島田裕巳、高島淳、鶴岡賀雄、前田耕作松枝到鶴岡真弓森雅子、月本昭男、小川英雄、武光誠、松尾光、松井健児、大林太良、中沢新一植島啓司、蔵持不三也、篠田知和基、関一敏、澤井義次、田中雅一、谷泰、竹沢尚一郎、後藤敏文、ウォルター・エドワーズ、フランソワ・マセ、フィリップ・ヴァルター、山田仁史、渡辺和子、渡邉浩司、中生勝美、坂井弘之、大月康弘、マイケル・ヴィツェル、ユーリ・ベリォーツキン、エミリー・ライル、スティーヴ・ファーマー、ニック・アレン、ジョセフ・ハリス、ボリス・オギベニン、ヴィム・ファン・ビンスベルゲン、目崎茂和、丸山顕徳、古川のり子、平藤喜久子、沖田瑞穂、諏訪春雄、荻原眞子、江川純一、エミリア・ガデレヴァ、田澤恵子、坂内徳明、大澤千恵子、崔仁鶴、樋口淳、石井正己、後藤明、直野洋子、木村武史、ヨルグ・リュプケ、中川洋一郎。

 

 

 

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東京神田・東方學會本館探訪記

百花咲き乱れ、気持ちの良い若葉の季節になりました。

冠状疫情は変異株が主流になりつつあり、まだまだ先が見通せません。為政者たちの妄言や虚言に惑わされることなく、予防習慣を確実に実践し、「本を片手に!」日々を楽しく有意義に過ごしてまいりましょう。

 

 さて、今回は本に関するお知らせではなく、言叢社の入る東方學會本館を紹介いたします。
堀越三郎設計、1924年大正13年)竣工。元は東京中学校の三階建て校舎で、学校移転後日華学会に売却され、戦後東方學會の所有に。1971年に四階部分造築し、現在に至る。

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↑ガラス張りの4F部分は昭和の造築

 

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↑入り口はアーチと蘇鉄が目印



西神田の表通りから1本入った区画角地に、静かに佇んでいます。
千代田区の景観まちづくり重要物件に指定されており、その解説では
 

「竣工:大正 15 年(1926)頃。歴史・文化的特徴:東方学会は、昭和 22 年(1947)外務省所管により、日本の東方文化の学術的研究の発達、東方諸国の文化の進展および国際文化の交流を目的として設立された。建物の由来等は不詳。意匠・構造の特徴:鉄筋コンクリートモルタル塗仕上げの簡素な建物で、中央入口を階段室にし、中廊下で教室をレイアウトした学校建築のようである。下側にカーブを持たせた窓庇兼用の窓台と、同様の形状の屋根庇が水平線を強調しているのと、入口の半円アーチ以外は非常にプレーンな、機能本位のモダニズム建築」

 

となっています。

装飾性を排除した簡素なデザインですが、入り口の立体的なアーチ構造と扁額のような「東方學會」(実際には右からなので「會學方東」)の文字が風格を感じさせます。

蘇鉄の木がだんだん大きくなって、少し扁額が見えにくくなってきましたが、今ではこれも建築物の風格の一部になっています。変わりゆく神保町の片隅の、リアルなレトロ物件です。古本屋街からも近いので、気軽に見学にいらしてください。

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↑東方學會本館玄関

  

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↑玄関を入るとすぐ階段があります。学校っぽい雰囲気は残っていますね。

 

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言叢社はこちら

 

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このブログの「中の人」が上京する機会は年に1〜2回しかありませんが、今回は新刊書のデザインに関する打合せの現場を垣間見ることができました。

和やかな中にも専門家同士の意見や意向が、時に小さな火花を散らしながら飛び交う様子は、あらためてここが知の発信基地であり、同時に書籍文化揺籃の地であることを深く実感させてくれました。

言叢社編集部は東方學會本館1F片隅の、小さな部屋にあります。小さな小さな部屋ですが、ここにはたくさんの夢や知識や歴史や文化がぎっしり詰め込まれていて、本となって世間に生み出されていく日を待っているのです。

 

gensousha.sakura.ne.jp

新井靖雄『雪の屋久島』写真展開催中です(追記)

屋久島町役場本庁フォーラム棟にて、 新井靖雄『雪の屋久島』写真展が開催中です。

現地での開催ということで、新井さんの感慨も一入と思います。

期間:4月10日(土)-4月18日(日) 9:00~17:00

www.town.yakushima.kagoshima.jp 

いつのまにか自由な旅行や移動ができにくい時代になってしまいましたが、一人でも多くの人にこのすばらしい写真集を手に取っていただき、雪の屋久島にも思いを馳せていただきたいと思います。

www.asahi.com 

↓写真集の詳しい内容紹介は、下の「既刊」をクリックしてください。言叢社のホームページにリンクしています。

既 刊

 

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図書新聞」に書評が掲載されましたので紹介します。

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写真集を手にする新井さん(「埼玉新聞」記事より)

 

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写真集『雪の屋久島』表紙

以下、代表的な作品を何点か紹介いたします。

 

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※ 写真集はすばらしい印刷技術によって仕上がっています。個々の作品に表現された空気感や奥深さなどは、デジタル的に四捨五入されたweb上の画像ではなかなか再現出来ません。そういう意味でも、この写真集に興味を持たれた方には、ぜひ実物を手に取って紙の持つ質感とともに全ての写真を味わっていただきたいと思います。

 

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絶滅しません!

春分ですね。

二至二分は地球上で循環する生命共通の節目です。

冬至から既に三ヶ月。百花繚乱の季節がやってきました。

ところで古本屋で気になるタイトルの本を見つけて手に取ってしまったのですが・・・

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ご安心ください、紙の書物は無くなりませし、絶滅しません。

 

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